憎きウイルスによって激動となった2020年にもついに終わり。そんな秋クールは放送延期等が相次いだしわ寄せにより、とんでもない精鋭揃いのクールになりました。
以下、感想。
- 魔王城でおやすみ
- くまクマ熊ベアー
- キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦
- アサルトリリィ BOUQUET
- 安達としまむら
- 100万の命の上に俺は立っている
- 魔女の旅々
- ご注文はうさぎですか?BLOOM
- 体操ザムライ
- いわかける!-Sport Climbing Girl-
- まえせつ!
- 秘密結社 鷹の爪〜ゴールデン・スペル〜
- おちこぼれフルーツタルト
魔王城でおやすみ
始まる前は深夜アニメに丁度いい癒し枠なのかな? とか思ってましたが、蓋を開ければ今期屈指のギャグアニメでした。いわゆるRPGのテンプレ構図を逆手に取った、メタ要素もたっぷりな内容になっています。
傍若無人の限りを尽くすスヤリス姫とそれに振り回される魔王軍、ほぼ全話を通して無限に天丼を繰り返していますが、単純な構造だからこそ考え無しに笑っていられるというものです。後半に入ると、この作品内で出来上がったテンプレをさらに崩すような捻った展開も多いので見飽きることもなく。
マスコット的なキャラが多いのも特徴ですね。動画工房らしい柔らかい線で生き生きと描写されていたので、どのキャラも印象深いです。比較的万人向けな作品だったんじゃないかな。
くまクマ熊ベアー
なろう枠として最近増えてきた女性主人公。転移なのか転生なのかやや曖昧ですが、いつも通りその世界における人智を超えた能力で好き放題やるタイプです。
今回はパワープレイが多かったのが印象的。変に捻った内容で知的さをアピールするよりは単純明快ですが、代わりに物語の起伏が薄くなるんですよね。全部ゴリ押しで解決できてしまうので。本作はその埋め合わせをキャラ描写で行った形。これといって理由の無い献身で恵まれない人々を救うのは現世に未練が無いから出来ることだと思うと、なんだか切ないですが。
人間関係に注力し出すと今度はスケール感が問題になりますが、比較的ミニマムに収まりましたね。最終話では他ならぬ相棒との話に帰結したのも良かったです。続編も決まったということで、何が待ってるのやら。
キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦
最近すっかり減った気もする純正ラノベ作品。科学の発達した近未来を舞台に魔法も出てくるというちょっと前ではお馴染みだった光景が繰り広げられています。個人的にはこの近未来風というのが微妙に刺さらないんですけどね……。
内容は基本的にはシリアス一辺倒、敵対する二国の間で繋がり合う主人公とヒロインという構図はなかなか独特ですが、一方でギャグ描写はラブコメのTHE・王道そのもの。一周回って懐かしさを覚える方も多かったようです。
「この辺で一冊終わるんだろうな……」と感じさせるぐらい物語の区切りがメチャクチャはっきりしてるので、細かく切ってもわりと見やすいかもしれません。
アサルトリリィ BOUQUET
大元がアクションフィギュアという変わったメディアミックス作品。ブシロード的経営戦略でソシャゲが出て、アニメはその前日譚にあたる部分とでも言うのでしょうか。シャフト制作ですが、いわゆるシャフト節はほとんど出ておらず作画パワーにわずかに垣間見えるかといったところ。
内容はと言うと、もはや隠す気も感じられない濃厚な百合作品。人類に対する脅威とそれに立ち向かう特殊な能力を持った少女たちの物語……あれ? 刀使かな? まあ間違ってない気もします。
時おり急ぎ足な部分が見受けられたりもしましたが、総合的に終盤の盛り上がりは王道で、百合とか抜きで楽しかったです。最終話まで必ずキャラ名のテロップが出ていたのも、登場人物が破茶滅茶に多い作品としては配慮されていましたね。単純に一つの作品として完結しているのでシリーズの導入としてもバッチリ。
安達としまむら
ラノベ界隈で一定の需要があるとか無いとかされている百合枠。ということで今期アニメリコは両枠合わせて大変濃密でした。アサリはかなり直球勝負でしたが、こちらはすごく遠回り……回りくどいレベルですね。そこかしこで童貞だ童貞だと言われていました。
話が進んでも関係性は大きく変わらないのに安達の想いだけが増幅されていって、しまむらの知らないうちに(安達が)大変な状態に陥っているのはもう見ていて笑うしかなかったです。一人で激重感情抱えて一人で妄想して盛り上がって一人で落胆してる生き物が面白くないわけないでしょう。本人には酷な話ですけど。
進級前後からはしまむら側からも(たぶん友達付き合いの範疇として)色々仕掛けてくることが増え、それに一喜一憂する安達。そりゃ犬とも表現されます。それでも、最後の最後にはちょっと思うところはあったようですけれど。
一方で完全にデキてる日野と永藤ですが、この二人でのスピンオフとかはやらないのでしょうか。中の人的な意味も含めて見てみたいです。
100万の命の上に俺は立っている
22時ということで土曜の『ごちうさ』と同じく労働の犠牲となりました……。
内容としてはデスゲーム寄りの異世界転移でそれとなく皮肉ったようなエッセンスも混ざった感じ。それよりは、ワケあり版だったりCパートだったりのウケを狙いすぎな施策が刺さるかどうかだったかなぁ。オタクはなんだかんだ言って真面目に作られたアニメを真面目に見たがってるので……。
というか、2期あるの?
魔女の旅々
我らが上田麗奈さんがOP主題歌を務めるということで、放送前から期待していました。
内容はざっくり言って「キノ」。実際はまるで異なりますが、アテのない旅ものとして比較対象に上げられるのは必至でしょう。そういうこともあって、たまに暗めの話が入るとすぐ喚く輩もいたそうですが。
個人的にはビターエンドやバッドエンドも「心にモヤモヤしたものを残す」という意味で印象的なので好きだったりします。単話完結なのでわざわざ考察するまでもないことも多いし、語り手であるイレイナさんの良い意味でのドライさや理不尽さに適応できるかが分かれ目じゃないでしょうか。
最終回ではタイトル回収がされましたが、話の流れで薄々勘付いたとはいえ好きなタイプの回収でした。(たぶん逆ですが)『リテラチュア』の歌詞になぞらえた様なお話だったので、かなりポイント高いです。
ご注文はうさぎですか?BLOOM
今期でも特に世間的期待度の高いタイトルでしたね。自分は間に挟んだOVA2作を見ていなかったので、実に5年ぶり。
以前からその節はありましたが、3期では人物の成長および時系列の経過に、より強く焦点を当てたお話作りがされていましたね。
ここまで書いておいてなんですが、後半の方は仕事の関係でろくに見れてません。Twitterの実況でなんとなく内容を把握できるのは面白かったです。
体操ザムライ
お前がNo.1だ。
失礼しました。実のところ、放送開始前はそんなに見る気がなかったんですよ。事前特番でようやく存在を認識したぐらいで。「『いわかける』の前枠だし見ておくかぁ」ぐらいのノリだったのが、とんでもないダークホースでした。
単なる競技体操のアニメというだけでなく、そこには一度は引退を決意した身からの再起という熱い意志が。それらを支える家族の愛もサブテーマになっていますが、この構成バランスが本当に美しい。常々思いますが、オリジナルアニメだからこそ可能なことだと思います。
そしてメインとなる体操試合の描写ですが、これまた臨場感がスゴイ! キー局だからできる(?)本場のアナウンサー起用もあって、実際の大会さながらの映像でした。アニメを見ていて心躍る経験をするのは実に久しぶりです。
深夜アニメと侮ることなかれ、幅広い世代の方に胸を張ってオススメできる素晴らしい作品だと思います。ぶっちゃけ前提条件のある一部作品を除けばマジで今期一。
いわかける!-Sport Climbing Girl-
そんなわけで久しぶりに登板となったテレ朝は2枠ともちょっと物珍しいタイプのスポーツアニメということに。こちらは原作アリですね。ざっくり言って「たまたま興味を催したスポーツに対する才能がヤバかった」タイプのやつ。厳密には主人公の生来の性質が活かされるというものですが。
シナリオはクライミングという特殊なスポーツでありながら王道のスポ根系。基礎からテクニックまでバッチリ教えてくれます。学生というのもあって、より青春群像劇に焦点が当てられた形ですね。
ところどころ妙にキャラが濃いライバル校キャラだったりツッコミどころはあるものの、それらも含めて、前枠とは似て非なる独特の空気感を生み出していました。違う作品を並べて語るのもアレですが、しかし重なるポイントがあったのも事実で、それがまた面白かったです。
まえせつ!
駆け出し芸人をテーマにした作品ということで、ネタがそこまで面白くないという評価も下手したら褒め言葉なのかもしれません。こういった職業の素人とプロの境界線ってどこなんでしょうね。
レギュラーやゲスト陣に多くのリアル芸人さんを起用しているのが特徴的でしたが、そのいずれもが声優のお芝居がちゃんと上手かったのがすごかったです。いや、本人役だからお芝居として意識していないと言われればそうかもだけど、とにかく喋りの滑らかさが映像に引っ張られていなかった印象です。
反面、話としては時おり良い具合に波がある部分もありつつ、やや盛り上がりには欠けたかな〜という感想。案外こんな感じなのかもしれませんけどね。
秘密結社 鷹の爪〜ゴールデン・スペル〜
実のところFROGMAN監督作品にはもう10年以上お世話になっています。昔にテレ朝でやってた時のアニメも見てたりしました。
今回は鷹の爪としては珍しいストーリー仕立てで、かつ豊富なサブキャラが登場しましたね。相変わらず時事ネタをかなりの速度感で挟みつつ、でもしっかり伏線は張ったり気になる引きにしたり、短編アニメとはいえ見応えのある作りでした。作品を通してのメッセージは率直に言ってクサいですが、そこはコロナ禍という状況だからこそ強く伝えたいということなのでしょう。鷹の爪らしいと思います。
……そういえば、今の鷹の爪は関係無いですがFlashのサポートが終了しましたね。時代の流れを感じます。
おちこぼれフルーツタルト
どうせ長くなるので一番最後に回しました。昨今の事情により敢えなく秋期へ先送りになりましたが、それが却って功を奏した気もします。なにせ周りを見渡せばきらら枠、アイドル枠、百合枠に下ネタ枠とある中で、今期はその中でも選りすぐりの錚々たる面子が集っているわけで、そのいずれに対しても決して見劣りしない一定の存在感を発揮していたのは、ファンの贔屓目を抜きにしてもスゴイことですね。
そんなわけで連載開始からの約5年ほどを追い続け、自身としては恐らく初めての「原作勢」でもあるワケです。放送が始まった当初はなかなか現実感がしなくて、今でも宣伝PVを見ると初心に帰れたりします。慣れ親しんだイノやロコに声がついて動いてるだけでこんな気持ちになるんだなぁって、原作者でもないのに感慨深くなったものです。
あえて包み隠さずに言うと、放送前までおちフル原作はそこまで読み込んでいなかったんですよ。単行本が年1間隔で出るのもあって、新刊が出る頃には前巻のエピソードを忘れてる……なんてこともしょっちゅう(おちフルに限らず)。それが、アニメ放送以後は原作勢として予習するようになったり、あるいは放送後に比較する形で復習したり、はちゃめちゃに読み返しています。それでようやくアニメ化の実感を得ていました。
基本的にはかなりキワどいネタまで含めて忠実に再現していましたが、後半は尺不足からかザクザクとエピソードのカットがされていたのは悔しいところです。特にアニメ化範囲である3巻は、4巻以降の展開に繋がる部分も巻き込まれてカットされていたので、何とかして取り戻してくれないか……願っています。
単体の作品として見れば、1クールのアイドルものでここまでしっかり挿入歌が作られていたのは印象的でした。「ブロ子」に始まり「ネズレンジャー」「カレー」、さらに原作勢も知らないあんみつの新曲まであったり。タルトの楽曲はほとんどギャグノリで消化されるのにも関わらず、かなりガチガチに作られていたのはちょっと贅沢でしたね。ありがたい話です。
最後にひとつだけワガママを言わせてもらうと、このまま終わってしまうのは絶対にもったいない! この後に続くエピソードはどれも「ひどい」の一言に尽きますが、だからこそ映像化されたところを見てみたいキモチもあります。前述した通りネット上でもそこかしこで話題になっていましたし、キボウが待っているといいなぁ。
これは個人的な考えですが、『おちフル』は見かけこそ低俗ではありますがその根底には逆境でも折れない心を持つ雑草魂が描かれていると思うんです。そんなおちこぼれに元気付けられた人や町があるように、自分たちも良い形で彼女達に恩返しが出来たら、こんなに嬉しいことはないですね。