皆さんは本ってどんな場所で買いますか? まあ普通は書店だと思いますが、書店の本って立ち読みや傷つき防止にシュリンク掛けがされていますよね。
買ってきた本をさぁ読もうとシュリンクを剥くのは、それこそゲームのパッケージを開けるような妙な高揚感があります。
作品によっては封印を解くような、そんな趣が……
というわけで『はなまるスキップ』感想記事です。
さて、ざっくり「きらら」といえば、今ではもう『可愛い女の子たちがワイワイ学校生活を送る』ものと認識されているでしょうが、実際のところ、それに該当する作品の方が少ないと思います。いやものすごーーーく解像度を低くして赤ちゃんみたいな語彙力で表現すればきっとそうなるんでしょうが、いかに「きらら」と言えどそういった共通認識に甘えた作品を易々と連載化させることは無く、それはこの『はなまるスキップ』においても同様です。
それでは、まずキャラクター達を見ていきましょう。きららとしては意外と珍しいデフォルメ体型がメインの漫画です。ピクニック同好会のメインを張る2人はオレンジ髪のサイドテール(っぽいの)と青髪のツインおさげというどっかの地学部にいそうなデザインでとっても可愛いですね。余談ですが『恋する小惑星』4巻も本作1巻と同日発売です。
脇を固めるサブキャラクターは、作中で未だに本名を呼ばれなかったり(実姉にすら)、こやつら問題児をもってして「使えない」と評される担任教師だったり、愛情が盲目的すぎてあまりに簡単に懐柔される研究生だったり、個性豊かなメンバーが目立ちます。
これだけでもすごく魅力的なんですが、良い作品は良いセリフから作られるということで、作中での発言にも注目です。
- 「お墓が近いし死に場所としては最適かもね」
- 「そしたら留年をウリにした漫画として再始動しよ☆」
- 「ファンである自分にアイデンティティを見出している人ね」
- 「ここからは見えないマスクを着用してお送りします」
- 「課外活動は正規メンバー限定ってことで!」
- (部活対抗リレーの参加者が集まらないことに対して)「陸上部優勝の当て馬にされるのはちょっとね」
- 「不景気、雇用不安、ブラック企業をテーマにした世相反映劇よ!」
- (生徒会主催の出し物コンテストで生徒会の出し物が1位になったことに対し)「マッチポンプ!やらせだ!」「自作自演!空売り!」
- (生徒会からボランティアを依頼され)「部活化には生徒会の承認が必要だよね」「生徒会に媚を売らなければ」
- 「クリスマスなんか無い!ケーキなど不要!おもちゃ業界の策略に騙されてはだめ」
- 「結局みんながほしいものはお金よねー!?」
- 「ページ内に全ての事象が描写されているとは限らないよ」
- 「休み明けに生徒会不信任案を提出しましょうね」
- 「研究生以下の存在がついに誕生、待ちわびたのです」
- 「活動実績のない部活にメスを入れてつぶせば私たちが部活になるための枠が空く」
- 「下請けによる安価な労働力って便利よね」
いかがですか? これが今の……令和の「きらら」です。公式の煽り文句なので間違いありません。
そんなわけで『はなまるスキップ』の最たる魅力は毒であることに他なりません。愛らしい見た目で誘き寄せ、強烈な毒で獲物を捕らえる。自然界にもそういった生き物は多いですから、こんな内容なのもごくごく自然ですね。
とはいえ本作はあくまで「きらら」ですから、ただアウトローなだけではそこらの不良漫画でも読んでいた方がよほどエンタメ。恐らく全ての「きらら」作品に共通する(こじつけで出来そうな)テーマといえばそう、友情と勝利です。1個足りないと言われても、今どき努力なんて流行りませんからね。
サボり常習犯、成績不良、汚職、贈賄、生徒会への反逆、そして手のひら返しと、悪行に悪行を重ねる彼女たちですが、それもこれもピクニック同好会を部活に格上げするためというとっても尊い(?)目的のための活動です。
「悪には悪の救世主が必要」とはどこぞの漫画のセリフですが、そういった多角的な視点で、なぜこれが「きらら」なのか? を追究していけば、やがては世界の真理に到達できるのではないでしょうか。
……え? 何を言ってるか分からない? そもそもピクニックはどこに行ったのかって? 記事に振りかけた化調が足りなかったかな。とりあえず下の商品をポチって読んでから、カバー裏の描き下ろしを見ればいいんじゃないかな。きっと心がぽかぽかする何かがあると思いますよ。